注意:イタチとイズミのCP描写が緩く書かれています。



  昔むかし…ではなくちょっと昔、木ノ葉の里に1人の秀才に嫉妬した3人の少年がいました。秋の初め頃から3人は毎日と言っても良いほど学校の帰り道の途中にある川の土手に川の字になって寝転がってなにやら話をしていました。しかし何時も楽しいという雰囲気というより、何かに思い悩んでいる様子でおりました。
「なんであいつばかりが注目されるんだよ!」
「面白くねぇな…ったくよぉ」
「オレが石投げても簡単にキャッチされて通用しねぇ…ちきしょう!」
「あいつに弱点ってないのかよ」
「弱点があれば今頃シメてるぜ」
「なんといったって、うちは一族だもんな…」
仲間の「うちは一族」という言葉に思わず、はぁ〜…という深いため息が3人の口から漏れました。
3人の少年、テンマ、ハギリ、カツラはアカデミーに入ってすぐに秀才と名を轟かせた少年、うちはイタチになんとしてもギャフンと言わせられないかと絶えず頭をひねっておりました。少年たちにとって、うちはイタチは年下でありながら先生たちと女子たちの眼差しを独り占めする目の上のたんこぶでしかなかったのです。少年たちは一か月ほど前から3人がかりでイタチを屈服させようと挑んでは、柳に風のように簡単に攻撃をかわされておりました。
「でもよ、このまま引き下がるわけにもいかねぇぜ!皆あの生意気な奴の泣きっ面を見たいだろう?」
リーダー格のテンマの言葉に2人は「おう」とうなづきましたまだ3人の心の中でイタチに負けたことを認めることができなかったのです。
「うちは一族にもどこか弱点はあるんじゃないのか?」
「それな!」
ハギリの返答にテンマがすかさず反応しました。
「正攻法ではダメだ。弱点を探すんだ。」
カツラが不安そうに呟きました。
「でもよ…どうやって見つけるんだよ。観察や尾行はあいつにすぐ気付かれるだろ?」
「あいつと同じクラスの奴に逐一報告させるんだよ。ほんの少しでも動揺することがねぇか見つけられたら策が練れるぜ。」
こうしてテンマたち3人のイタチへの報復作戦が決行されました。
三週間後、3人の少年は自分たちが脅して従わせた下級生にイタチのことについて問い詰めましたが、一向に弱点らしき情報は出てきません。
「てめぇ、ほんとうに全部言ってるんだろうなぁ!」
「嘘言ったり隠し事してたら、為になんねぇぞ?」
テンマに胸ぐら掴まれながら、横でハギリが指をゴキュゴキュ鳴らしている音を聴いて、すっかり半泣き状態になった下級生の男の子は必死で否定しました。
「違います!絶対に嘘じゃありません。イ…いいいイタチ君は本当にいつも勉強できて実習も完璧で、泣いたことも怒ったこともビックリしたこともないんです。」
「うるせぇ!!」
テンマに乱暴に突き離された男の子は尻から思いっきり地面に倒れてしまいました。
「もういい!あっちに行け!」
顔が真っ青になった男の子はふるふる震えながら立ち上がると、泣きながら走って逃げていきました。
「…ったく役立たずが」
「次の手はどうすんだよ?諦めるのか?」
「諦めるわけねぇだろぉ!」
テンマが怒りを露わにしました。しかし、誰もイタチの弱点を見つける方法を思いつくことができませんでした。
ある休日のこと、カツラが母親と一緒に買い物に行った帰りにお団子屋のほうへふと目をやると、イタチが父親らしき男性と団子を買っている光景を目にしました。イタチの表情がなんとなく先日と違う感じがしましたので、カツラは思わず彼を観察すると、少年の口元が微かに微笑んでいるように見えました。
カツラはその表情にわずかに心に引っかかるものを感じながら、母親と帰路に着きました。
翌日、テンマに何気なくその時の様子を伝えると「それだ!」とテンマは目を輝かしながら叫びました。
「弱点がなければ作れば良いだけのこと」
ハギリとカツラが顔を見合わせて怪訝な顔をしている中、テンマは2人の肩を抱き寄せてコショコショと内緒話を始めたのです。
数日後、イタチのクラスでは妙な噂が広がっていました。
「イタチ君って団子が好きみたいだよ」
「え?本当?知らなかった」
「意外だよね。あんなにクールでカッコイイのに可愛いところがあるんだ」
「それがまた魅力なのよ」
イタチは自分の噂が広がっていることに気がついていましたが、実害はそんなにないと思って気にも留めておりませんでした。
秋が深まっていくと木ノ葉の里中の食べ物屋さんは、皆競うように美味しそうな匂いを街中の至る所に漂わせます。菓子屋さんや団子屋さんも例外ではなく、栗や芋、ナッツ類など旬の食べ物をふんだんに使った新商品を店頭に並べるようになっておりました。
アカデミーの休日になると、里中の甘味処に沢山の女の子たちが殺到しました。
「イタチ君に美味しい団子持ってきてあげるんだ。そこから話の輪を拡げられないかな?」
「あと半年しかないから、その間にイタチ君と仲良くなりたい!」
上級生、下級生関係なく、女の子たちは誰よりも出しぬこうとこぞって自分たちが美味しいと思う旬の団子を買い求めては、憧れの少年の家まで届けに行きました。1人もしくは仲良し組で買いに行ってもお店でクラスメートと出会い、行く方向も同じで、美少年の家の前に着いたら既に大勢のライバルたちが群がっております。玄関先で若い女の子たちが口々に「イタチくーーん!」と叫んでいる様は、うちは一族の人たちの間でもちょっとした騒ぎになっておりました。
その様子をこっそり遠くから眺めている3人の男の子は、ククク…と忍び笑いをやっておりました。
「うまくいったな!テンマ」
「我ながら良い案だと思うぜ。オレって天才!」
ハギリに煽てられたテンマは、してやったりと言いたげな笑みを浮かべていました。
「けどよ、これってイタチにとっては幸せな事でオレらにとっては面白くない事ではないのか?」
「うっせぇんだよ!あいつにとっては迷惑な行為でしかねぇんだよ」
納得いかない表情のカツラに畳み掛けるように、テンマは言葉を続けました。
「あいつの頭の中は忍術と団子しかねぇ。女に興味はねぇんだよ。だから女からのプレゼントは鬱陶しく感じても、嬉しいとは感じねぇ変な奴なんだよ」
「ポーカーフェイス決めているだけで内心は喜んでいるかもしれないんじ…」
カツラが言い終わらないうちにテンマは彼の胸ぐらを掴んで睨みつけました。
「ひ!」
「オレが杜撰にあいつを監視してたと思ってんのか?あいつはクラスの女子が声をかけても会話をすぐにきりあげる奴だ。誰かとまともに会話したところも見た事がねぇ。つまり、ダチがいねぇんだよ」
カツラは返事の内容よりも先に、青筋が二つ三つ浮かんでいる友の顔を見て「これは口応えしてはいけない」という事を悟ったのでした。
「う…うん。わかった。わかったよ」
自らが解放してやったカツラが落ち着いたのを確認してから、テンマは二ヒヒ…と薄暗い笑いを浮かべながら言いました。
「今日からイタチにとって団子は嫌いな食べ物になるぜ!」
しばらくして玄関が開いて、少し戸惑った様子で1人の黒髪の美少年が出てきました。
「イタチくーーん!団子食べてぇーー!」
「私の団子を食べてぇーー!」
「私のは手作りだよぉ〜!」
「私は毎年自分の家で作っているよぉ〜〜!」
自分の姿を見た途端に、女の子に囲まれて四方八方から団子を差し出されてイタチはすごく迷惑に感じていました。なによりも騒がしい音や声で近所の人たちの冷ややかな目や通り掛かりの同族から向けられる好奇な視線がすごく嫌で堪らなかったのです。「それでも女子たちは自分のために団子を持ってきてくれたんだから、真摯に対応すべきだ」と彼は思っていました。
「悪いがオレには必要ない。食べたいなら自分で買いに行くさ。お前たちの団子はお前たちの為に食べてくれ」
イタチはそう言い終えると、瞬時に彼を取り囲む女の子たちの群集から外に飛んだかと思うとあっという間に10m先の電柱にまでジャンプして、シスイとの稽古場へと向かって消えていきました。
唖然呆然として消えた方向を見やる女の子たちを尻目に、テンマ、ハギリ、カツラが悔しがっていました。
「くっっそぉ〜〜〜!あいつアッサリと断りやがった。そういうところが気にくわねぇんだよぉ!」
カツラの胸ぐらを捕まえていた時よりもいくつか多く青筋を浮き出しながら、テンマの苛立ちが爆発しました。
「次はどういう手を使うんだ?あいつのこの弱点まだ使えるんじゃないのか?」
「弱点じゃねぇ…あいつの好物だが、途端にトラウマになるような案が何かねぇかな?」
シスイが待っている訓練場に向かいながら、イタチは家の塀の壁や電柱の陰に隠れてこちらを見ていた見覚えのある3人の顔を思い浮かべておりました。
「あの人たちはオレの好物を女子たちに知らせて何がしたいんだろうか?」
ーーおそらく先月のオレへの攻撃からして良い感情から動いているわけではないのは明らかだ。しかしオレを貶めようとしての行動だとしてもあまりにも意味がない。オレにとってアカデミーでの生活はもっと先の未来にある夢への通過点に過ぎない。それに…あんな見え見えの隠れ方をやっていて大人たちから怪訝な顔をして見られていたというのに、あの人たちには全く自覚がないのか?ーー
太い枝から枝へと飛び移りながらあれこれ考えを思い巡らしているうちに、徐々に秋色に染まっていく森の木々の風景から緑の生い茂る芝生へと視界が広がりました。
「待ってたぞ!」
「シスイ」
右腕を天にあげた短髪の少年の姿を見つけると、イタチはそこへと降り立ちました。
「何かあったのか?」
「相変わらずシスイは鋭いな」
ニカッと片目をつぶって笑ってみせる友達の姿にイタチはさっきあった出来事を包み隠さず打ち明けました。
「やっぱりな。道理で変な顔しながらこっちに来ていたというわけだ」
「…そんなに顔に出ていたのか?」
「ああ。オレにはお前が未知の生物に遭遇したような顔をしていたぜ」
友達の一言にイタチは内心「もっと精進しなければ」と思いました。
「まだまだ修行が足りないと思ったか?お前らしいな。お前は嫉妬されているんだ」
「嫉妬?」
「アカデミーでお前は誰よりも飛び抜けて才能が溢れている存在だ。奴らにとってはお前が脅威で妬ましいんだな。お前は教師からも一目置かれている上に、女子にモテるからな」
「やめてくれ。そんな下らない事に巻き込まれる謂れはない」
年下の友達のはっきりと困惑を表した顔にシスイの口角は、ますます上がっていくのでした。
「秋祭りだ!それしかチャンスはない!」
日が傾き始めた頃、何時もの川の土手でのテンマの突拍子な叫び声に2人の少年はビクっとしました。
「イタチが祭りに興味があると思うか?」
「新嘗祭りで使った新米からの米粉や餅粉で作った団子や餅は必ず店頭に並ぶだろ?あいつはそれを取りに行くはずだ」
「それがどういう関係があんの?」
ハギリの疑問にへへッと鼻を鳴らしながら得意げにテンマは解説しました。
「油女一族、奈良一族と…忍の里に貢献してきた有力な一族は、必ず自分たち一族の繁栄祈願のために、その年の秋に初めて採れた米から作った食べ物を持ち帰って先祖にお供えすんだよ」
「つまりうちは一族も例外じゃねぇんだな」
「そういう事だ」
「テンマ、お前頭いいな!」
へへへへッとテンマは自慢気に高笑いしました。
「で、具体的な策はどうするんだ?」
「明日の学校帰りに改めてここで話し合おう」
テンマの計画が待ち遠しくて悪友たちは目を再び輝かせながら力強く答えました。
「おう!」
11月吉日、木ノ葉の里中がお祭りモードに包まれました。
毎年、新嘗祭りの時季になると農家の人たちが丹精込めて作った新米が俵にされて、火影の家にある特別な倉庫に一時納められます。祭り当日、火影は上忍以下の部下たちに多くの米俵を顔岩の麓にある公園に運ばせます。そして高く積み上げられた米俵が歴代火影の顔岩に向けて御供えされてから、火影自らが里の人たちの代表として歴代火影たちに書状を読み上げ今年も多くの里の人の命を繋げることができた事に感謝の意を述べるのです。
火影の後ろには志村ダンゾウ、うたたねコハル、水戸門ホムラといった御意見番と火影の側近たちといった上層部が立ち並び、彼らの後ろには秋道一族や油女一族といった里の主要な一族の長とその取り巻きたち、及びその年に目まぐるしく働いた上忍たちが肩を並べるように立っておりました。その後ろには菓子屋や団子屋、御飯処などの米を扱う店主とその従業員数名が続き、呼ばれていない上忍以下の忍や里の人は通常通りの任務や仕事をこなしました。また休暇中の忍は見物人として遠くからの参加を許されていました。
「本年も無事に豊作を迎えることができ、多くの里人の命を繋げる事ができた事を、是を以って感謝申し上げる」
歴代火影たちへの感謝の儀式が済んだら、米俵は参加していた忍たちによって里中のお店へと運ばれていきます。そこで新米が使われ、御供物用の団子や餅その他の商品として、店頭に並ぶのが慣習となっていました。
祭りは4日間に渡って開催されます。
「イタチ、例の団子屋からの知らせは来たか?」
「うん、できたって」
「そうか。イタチ、早速だが団子を取りに行ってくれ」
「わかった」
父親に言われてイタチは馴染みの団子屋に向かいました。
予約していた必要の数を受け取り、支払いを済ませると、すぐに南賀ノ神社に足を運びました。夕方から一族所縁のこの神社で、御祭神六道仙人とその息子インドラ、初代火影との木ノ葉隠れの里の共同創始者であるうちはマダラ、その弟うちはイズナと言った一族所縁の神や代々の先祖たちに団子や餅を御供えしてから、一族繁栄の祈祷をして、舞の奉納をします。
イタチは御供物を一族の大人たちに渡した後、一旦家に帰り、行事が始まるまで2歳の幼い弟と一緒に遊んでいました。
「オレは一族の繁栄よりもサスケがもっと大きくなって一緒に話がしたいと思う」
そう独りごちてサスケのほっぺを軽く摘んで緩く引っ張ると、物心のつかない弟は嫌がって首を横に振りました。その様がとても可愛らしくて、イタチはくすっと笑いました。今度は弟のおでこを軽く指で小突くと、少し泣きそうな顔をして両手でおでこを覆って抵抗しました。その様もやっぱり可愛くて、何度も何度も見たくて仕方がなくて、泣かせてしまう寸前まで、同じことを繰り返して遊んでいました。
行事がはじめる前の兄弟の楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
「そろそろ行こう、サスケ」
時間が来てイタチは弟を抱きかかえると、少し重い足取りで玄関へと向かいました。
すっかり夜になった神社からの帰り道、2人の寂し気な影が夜道に長く伸びていました。
ーーせっかくの目出度い日なのに、最後まで楽しく行事をやって欲しかった。サスケのためにも。ーー
弟はすっかりイタチの腕の中で無邪気な寝顔を見せています。
御下がりは後で両親が持ち帰ってくれるだけ、幾分心が軽くなった気がしました。その反面、家族みんなで一緒に家に帰れないのは悲しいなとも感じていたのです。
ーー収穫が豊かで皆が皆、命ある事に感謝し、ずっと何不自由なく生きていけるように祈願する行事なのに、どうして大人たちは最後に談合をするのだろう?ーー
「イタチくん?」
俯いたまま身体を引きずるように家へと向かっていた時に、背後から高く澄んだ声が聴こえてきました。
イタチが名前を呼ばれた方向に振り返るとクラスメートのうちはイズミが立っていました。
3人は肩を並べて、しばらく沈黙したまま夜道をゆったりと歩いていました。
「イタチくん、お願いがあるの」
「何だ」
突然静寂を破って出たイズミからの言葉に、イタチは構えることもなく次の言葉を待っていました。
スゥ…と小さく深呼吸をしてから隣を歩く美少女は、口を開きました。
「今度…私の手作りの団子、食べてくれるかな?」
「え?」
イズミの方に顔を向けると、彼女は顔を赤らめながらもイタチの目を見つめ返していました。
「イタチくんのために一生懸命練習してみたらし団子を作ってみたの。イタチくんは甘いもの嫌い?」
イタチは無言でイズミの両手に目をやりました。色白の手には数カ所微かなやけどの跡がありました。
「…嫌いじゃない。むしろ甘いものは好きだ」
「ほんと?今度の休みに食べてくれる?」
「ああ」
「良かった!ありがとう」
そう言って満面の笑みを浮かべるイズミの顔の柔らかさにイタチは思わず魅入ってしまいました。
「な…何!?私の顔に何かついている?」
顔をさらに真っ赤にさせて慌てふためくイズミにイタチもまた狼狽えてしまいました。
「い…いや…別に」
そう言い終えると同時にイタチの顔も若干赤みを帯びてきました。
イタチとイズミの間に気まずいような小恥ずかしいような空気が流れています。2人はどうする事もできずに、ただ沈黙して俯くしかありませんでした。
突然、不自然な風が横から吹いてきたかと思うと、イズミとイタチとその弟の前に黒い影が3つ現れました。
「お前らぁ〜〜〜団子を粗末にしてないかぁあああああ」
その変に作られた不気味な声でイタチに抱っこされて眠っていた幼いサスケが目を覚ましてしまいました。
3人は一瞬、自分たちの目の前に存在する3体の奇怪な生き物の姿に固まってしまいました。
生き物はそれぞれ赤、緑、白の球体の紙の質感がある被り物を被っていて、顔に下手くそな落書きがそこに描かれていました。そしてまた見るため呼吸するための穴が鼻の穴や両目、口のパーツとして開けられていました。首から下は安っぽい布をマントがわりにして羽織ってあり、それぞれ赤、緑、白と色を乱暴に着けた軍手をはめておりました。
「お団子のオバケだぞぉおおおお〜〜」
「オレたちは棄てられた団子が化けて出たものだぞぉおおお〜〜〜」
「食べ物の恨みはこわいぞぉおおお〜〜〜」
そう口々に言って三色の団子のオバケはユラユラと自分たちの身体を揺らし始めました。
「テンマ…テンマ!これで合っているよな?」
「合っている。このままユラユラしながら近づいたりして、あいつらを怖がらせてやれ!」
「変装完璧…だよね?一応…大丈夫…だよ…ね?これ、本当にイタチに効くのか?」
「………作戦成功を信じるしかないだろう?闘いはこれからだぜ!」
「お…おう!」
三色の団子のオバケは小声で確認しあい、身体をユラユラさせながら、目の前にいるターゲットに近づいたり不気味な声をあげたり、遠ざかったりしていました。
サスケの顔は数秒間恐怖で引きつっていましたが、やがて身体中を震わせながら「怖いよぉ!」と激しく泣き叫び始めました。
「サスケ、大丈夫だ。あいつらの正体はオレの知っている上級生だ」
「!!何でお前、俺たちだと判るんだよ!?」
真ん中の緑団子のオバケが動揺しながら訊いてきました。
「こんな子供じみた事をするのは、あなたたちの他にいないからだ」
半ば呆れたような表情で答えると、イタチは再び泣いている弟をなだめ始めました。
「おい!そこの女子、なんで笑っているんだ?」
緑から指を差されたイズミは御下がりが入った袋で鼻から下を覆いつつも、涙を浮かべて声を殺して笑い続けるしかありませんでした。
「笑うんじゃねぇ!」
「テンマ、全くこいつに歯がたたねぇ」
「いや…先輩たちが勝手に意味のない行動をしているだけです。オレは何もやってはいない」
完全に呆れた表情で答えたイタチの一言で3色団子のオバケはがっくりと肩を落としてその場にへたり込んでいきました。
その日から小さなイタチの弟は、団子を見るたびに嫌がって遠ざけるようになってしまったのです。
めでたしめでたし(?)